快眠のための行動(昼)
デルタ派による効果
目を閉じることが重要だということは、徐々に理解していただけていると思います。では、休日など時間があるときは、日を閉じるだけでなく実際に眠った方が良いのでしょうか。
よく「仮眠は30分以内にしなさい」という注意事項を耳にすると思います。睡眠不足が続いているときに、いったん日を閉じると、2~3 時間は眠ってしまうことがありますが、なぜ30分以内にしなければならないのでしょうか。
これには、記憶をリプレー(再現)するという睡眠中の脳の働きが関係しています。
人は、昼間に学習Lた言葉や動きを、睡眠中に脳内で何度もリプレーすることで上達させる機能をもっています。この機能によって、ひと晩眠った後は、前の日よりも上手になり、成長し続けることができるのです。これは、本当にすばらしい仕組みです。
このリプレーする作業が行われているときの脳波は、デルタ波と呼ばれ、ゆっくりした振幅の大きな脳波です。
例えば、私は右利きなのですが、左手だけで折り紙のツルを折ってみます。実際に折ってみたら5分かかって、ぐにゃぐにゃのツルのようなものがようやく出来上がりました。
なんだか腕の辺りが痛いです。普段使わない左手の筋肉を使って、初めての動作をたくさん行いました。さて、今晩私が眠りますと、左手を動かすことを担う脳の場所、ちょうど右耳の上の辺りにあるのですが、この場所に集中的にデルタ波が出ます。新しく学習した動きを何度も反復練習している表れです。
この現象は、「局所睡眠(Local sleep)」と呼ばれています。前日に練習Lたことが、翌日に上達Lているのは、この局所睡眠によるさらなる反復練習のおかげだということです。眠っているときに練習してくれるとは、なんて便利なのでしょう。
この睡眠中のデルタ波という脳波は、朝起きた時点で「今日のデルタ波はこれだけです」と自動的に計算されてしまいます。これだけ良い機能ですから、やっぱり使い放題というわけにはいかないということでしょうか。限りある機能なので有効に活用したいところです。
実は、30分以上仮眠をすると、デルタ波が出てきてLまいます。すると、その晩のデルタ波が担うリプレー作業は分断され、夜のリプレー作業の効率が非常に悪くなつてしまいます。これでは私たちの日々の成長が妨げられてしまいます。というわけで、デルタ波を夜の睡眠だけにまとめるために「仮眠は30分以内にLまL よう」と言われるのです。